慢性呼吸不全
慢性呼吸不全ならびに呼吸リハビリテーション
COPDの治療としては、薬物療法や栄養療法などを含んだ包括的呼吸リハビリテーションの有用性が確立していますので、積極的にリハビリテーションプログラムを組んで効果を上げています。また、原因となる喫煙習慣に対しても禁煙外来を設けて指導を行っています。
そのほか、慢性呼吸不全をきたす疾患として、肺結核後遺症、間質性肺炎、気支拡張症などがあり、これらの疾患に対しても、COPDと同様、原疾患の治療と並行して呼吸リハビリを取り入れています。
呼吸リハビリテーションのご案内
南岡山医療センターでは、慢性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎、肺結核後遺症、気管支喘息、気管支拡張症など)による息切れのために日常生活に何らかの支障がでている方を対象とした呼吸リハビリテーションを行っています。これらの病気では、病気そのものを完全に取り除くことはできませんが、呼吸リハビリテーションを行うことで、呼吸が楽になりQOL(生活の質)が向上することが認められています。当院では平成22年より、医師、看護師、リハビリ療法士、薬剤師、臨床検査技師、栄養士、臨床工学士、ソーシャルワーカーから成る呼吸リハビリテーションチーム(現呼吸ケアチーム)を立ち上げました。診断と評価、患者・家族教育、薬物療法、酸素療法、理学療法、作業療法などのすべてを、各職種が連携しながら患者様へ提供し、患者様がご自身の肺の状態を理解したうえで、よりよい管理、より質の高い生活を送っていただけるような援助をさせて頂きます。どうぞお気軽にご相談ください。
当院における呼吸リハビリ入院患者数
(H22年4月~H25年10月)
呼吸リハビリ施行患者
(全155例)の年齢構成
呼吸リハビリテーションの目的
慢性肺疾患をもつ患者様にとって「息切れ」は活動性を制限する大きな問題となります。また活動性が低下することによって筋力や体力の低下を招き、さらに「息切れ」を増強させるという悪循環に陥ることもよくあります。呼吸リハビリテーションはこのような悪循環を断ち切ると同時に残された肺の機能を最大限に生かし、患者様のQOLを向上させることを目的とします。
また呼吸リハビリテーションには運動療法、呼吸法だけではなく、病識や薬識を深めるための患者教育や、嗜好や嚥下機能を加味した栄養療法も重要であることを踏まえ、多職種が参加した呼吸リハビリ専門医療チームを創設し、包括的呼吸リハビリテーションを実施しています。
呼吸リハビリテーションの流れ
外来または入院後、医師、看護師、リハビリ療法士による診察・アンケート、検査、面談を実施し、患者様の背景を把握したうえでプログラムを立てます。そのプログラムに基づいて実際にリハビリテーションが始まり、毎日リハビリ療法士がマンツーマンで運動療法(歩行訓練、筋力トレーニング、呼吸法、排痰法など)と作業療法(入浴、更衣、家事など)の指導にあたります。また栄養士・薬剤師による相談や指導、さらには医療ソーシャルワーカーも加わり、退院後の生活を想定しながら包括的にサポートいたします。退院前には介護保険事務所や酸素プロバイダー、時には地域の医療機関にも声をかけてカンファレンスを行い、スムーズに在宅生活に移行できるよう配慮します。
リハビリ風景
カンファレンス風景
新しい多目的スペースでオーダーメイドのリハビリを!!
平成26年7月に新病棟が完成し、1階南側にリハビリスペースと隣接した屋外訓練場を設け、また患者・家族が集えるホールをスペースの一体に取り入れました。多目的な設備が整っており、退院後の在宅生活を想定した具体的なリハビリが行えるようになっています。当院の呼吸リハビリでは、患者様ひとりひとりの要望や、生活環境を把握し、退院後の生活を想定しながらリハビリプログラムを立案します。必要あれば作業療法士やソーシャルワーカーによる自宅訪問や通所リハビリなどの提案なども行います。
屋外訓練場
屋内機能訓練室
入院から退院後まで、幅広くサポートします!!
基本的に初回のリハビリ導入時は入院が理想的です。リハビリだけではなく、疾患の理解を深めながら、薬物療法や食事療法を実際に受けて頂きます。入院中に吸入薬を中心とした服薬指導や、ご家族を踏まえた具体的な栄養指導も患者様ごとに行うことで、より効率的な実践的なものになるようサポートします。さらには退院後、患者様ひとりひとりのご要望、病態、リハビリの進行具合などを踏まえ、外来通院リハビリへの切り替えや、再度短期入院による微調整、ステップアップを行うなど、多様に関わらせていただきます。またリハビリの効果を持続させるため、定期的に外来で肺機能検査やリハビリ療法士による運動機能測定なども行い、機能低下をいち早くとらえて対応することで在宅での生活が長く続くように指導しています。
薬剤師より呼吸器疾患患者様へ
気管支喘息やCOPDの長期管理においては、吸入療法を中心とした治療が推奨されています。
吸入療法には、ドライパウダー吸入器を使用して粉末状の薬を吸入する方法、加圧噴霧式定量吸入器を使用してガスの圧力で薬を噴射して吸入する方法、ネブライザーを使用して液状の薬を霧状にして吸入する方法があります。
吸入薬は気道に直接作用することで高い効果が期待でき、内服薬よりも格段に使用量が少なくてすむ分、副作用も少ないという利点があります。ただ、吸入薬は単に吸入すれば効果が得られるものではなく、必要な吸いこむ力を満たすことや、吸入方法、息止め等の吸入手技を習得し、適切に使用することで有効に作用します。近年、多様な吸入器具(デバイス)が発売されており、上手に吸入するためにはそれぞれのコツを習得することが大切です。
そこで、当院では吸入療法の重要性を患者様に理解して頂き、適切な吸入手技を身に付け、積極的に治療に参加して頂けることを目的として薬剤師がマンツーマンで吸入指導を行っています。初めて使用する吸入薬に対しては、薬剤師が手本を示したうえで、患者様にもその場で試して頂き、より実践に即した方法をとっています。
複数の吸入器具を併用している方や、長年使い続けていくうちに上手に吸入できなくなっている方もおられるため、吸入手技や、副作用等を定期的にチェックすることで、患者様一人ひとりのコントロールが良好に継続できるようサポートしています。
栄養指導
吸入指導
さらには、リハビリで得た体力、知識をいかに維持するかにも重点を置き、入院中から退院に向けて患者様が自主的に記入する療養日記(共にほっとするノート)や、呼吸ケア教本(活き息さわやかBook)を独自で作成し、コミュニケーションツールとして日々の診療や患者の自己管理に活用したり、毎月「呼吸ケア教室」を開催し、医師、看護師、リハビリ療法士、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーが交代で呼吸器疾患、リハビリ、日常生活の工夫や薬・栄養についてわかりやすく話す場を設けたり、年に1回慢性呼吸不全の患者様を対象とした講演会「活き息さわやかに過ごす会」を開催し、患者様やご家族と医療スタッフとの親睦も深めています。
左:活き息さわやかBook
右:共にほっとするノート
活き息さわやかに過ごす会
呼吸ケアチーム
ワクチン接種について
肺炎は、日本人の死因の第3位です。
肺炎の原因となる細菌やウィルスは、人の体や日常生活の中に存在しています。カゼをひいたり、糖尿病や呼吸器疾患、心臓病などの持病があったり、年をとって体力が落ちたりすると、からだの抵抗力が落ち、細菌などが体内に入って肺炎を発症します。
日常でかかる肺炎で一番多い病原菌は、肺炎球菌です。
感染予防のためにできること
インフルエンザワクチン
- ワクチンだけでインフルエンザを完全に予防できるわけではありません。
- ワクチンを接種することで、インフルエンザの発症を予防するほか、もし感染したとしても、重症化を防ぐ効果があります。
- 接種してから免疫ができるまで、およそ2週間~ 1ケ月ほどかかります。
- 免疫は5ヵ月程度持続するといわれています。
毎年、流行期前の10月~12月に接種しましょう
肺炎球菌ワクチン
- すべての肺炎を予防することはできません。
- 肺炎球菌による肺炎などの感染症を予防し、重症化を防ぐ効果があるといわれています。
- 接種してから免疫ができるまで、およそ3週間ほどかかります。
- 免疫は5年以上持続するといわれています。
接種時期は問いません。再接種時期など詳細は薬剤師にお問い合わせください。
- インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンを併用することで、より効果的に肺炎を予防できます。
- 一般的には、それぞれのワクチンは6日以上の間隔をあけて接種します。
- お住まいの地域やご年齢により、自治体からの助成を受けることができます。
- 平成26年10月1日から、肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP)が65才以上の高齢者の定期接種になりました。
禁煙外来へようこそ
禁煙外来はタバコをやめたい方を支援するための外来です。
「タバコは病気の原因のなかで、最大の予防できる単一の原因(WHO)」といわれており、呼吸器疾患だけにとどまらず脳卒中、心筋梗塞、歯周病、胃潰瘍、肌の老化までもが喫煙による影響を受ける喫煙関連疾患であることがわかっています。このような禁煙関連疾患の予防と治療には禁煙が非常に重要といわれています。
当院では、慢性呼吸不全、肺癌、気管支喘息、肺結核、間質性肺炎などの慢性呼吸器疾患を抱えた多くの患者様の診療にあたらせて頂いており、タバコの影響力の大きさを日々痛感しております。「やめられない喫煙は個人の嗜好ではなくニコチン依存症という病気である」との認識から、わが国では2006年より禁煙治療に保険が適用されるようになりました。前記した通り、喫煙は本質的には「ニコチン依存症」であり、禁煙のメリットはわかっていても自分一人ではなかなか実行できないものです。
当院の禁煙外来では、禁煙によっておこる離脱症状を軽減するために禁煙補助薬(ニコチンパッチ、バレニクリン)も活用しながら、できるだけ無理なく禁煙できるように医師や看護師がカウンセリングやサポートを行っております。禁煙に関心はあるけど一人では自信がないという方がいらっしゃいましたら、ぜひご相談ください。
タバコの健康被害
タバコは肺癌はもちろんのこと、その他の癌の発症因子となります。上記のとおり吸 わない人にくらべて死亡率が1.4~32.5倍にもなります。また癌だけではなく、心筋梗塞などの虚血性心疾患や脳卒中の原因にもなり、喫煙本数が多ければ多いほどリスクも増大します。そして禁煙によりそれらのリスクは確実に減少します。
禁煙によるメリット
禁煙補助薬と治療スケジュール
禁煙補助薬
禁煙補助薬を2種類用意しています。両方とも保険適応での治療が可能です。
どちらを選択するかは、患者様の希望、状態により主治医と一緒にえらびます。
ニコチンパッチ (ニコチネルTTS R)(貼付薬) |
バレニクリン (チャンビックス)(内服薬) |
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治療スケジュール
標準的な治療スケジュールでは12週間に5回、来院していただく必要があります。
禁煙外来の受診について
当院では保険診療で禁煙治療を受けることができます。
以下の条件をすべて満たした場合にのみ保険が適応されます。
- ただちに禁煙しようと考えていること
- ニコチン依存症と診断されていること (TDS スコア5点以上:下記)
- ブリンクマン指数が200以上であること (ブリンクマン指数=1日喫煙本数×喫煙年数)
- 禁煙治療を受けることを文書により同意すること
- 過去一年間、保険をつかった禁煙治療をうけていないこと。
診察日時
完全予約制となっています。
初回受診 | 毎週木曜日 13:30(2名まで) |
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2回目以降 | 毎週木曜日 14:00~ |
※ 問診、診察、治療法説明など含め30分から1時間程度かかります。
※ ご希望の方、ご紹介の際は地域連携室へお問い合わせください。
地域医療連携室 TEL 086-482-3031 (受付時間 8:30~17:15)
通院スケジュール
前記「治療スケジュール」をご参照ください。12週間に5回受診していただきます。
医療費の目安
禁煙補助薬は2種類あり、どちらの治療を選択するかは患者様のご希望、基礎疾患などによって決まります。どちらの薬剤かによって若干医療費は異なりますが、5回の診療でおよそ13,000~19,000円程度です。
また次のような場合は、自費診療となります。
- 禁煙治療保険適応の条件に当てはまらないが、同様の治療を希望される場合。
- 全5回の治療を越えて引き続き治療を希望される場合。
- 初回の治療開始から1年以内に再度治療を希望される場合。